ごあいさつ
論文抄読のまとめ 2024〜 (歯科関連の方へ)
小口径インプラント支持オーバーデンチャーにおける即時荷重と待時荷重の比較
原題 :Immediate Versus Non-Immediate Loading Protocols for Reduced-Diameter Implants Supporting Overdentures: A Systematic Review and Meta-analysis
筆者 :Ying Liu, Yaoyu Zhao, Quan Sun, Haibin Xia, DAhong Xia, Yi Bai
掲載紙:JOMI 2024 VOL39 Number5 P657-664
PURPOSE
小口径インプラント支持オーバーデンチャー治療時における即時荷重と待時荷重の比較をシステマティックレビューにて比較すること
MATERIALS AND METHODS
・小口径インプラント支持オーバーデンチャーにおける即時荷重と待時荷重の比較をRCTにて行った論文を
・MEDLINE, Embase,コクランデータベース及びハンドサーチにて収集後、2名の研究者が独自に採択し、意見の食い違いは3人目の研究者が判断
・バイアスの評価はRob及びGRADEを用いて評価
・データの統合はReview Managerを用いて行い、同一性はQテストにて評価
・即時荷重、待時荷重それぞれにおけるインプラント生存率・MBL・プラークインデックス・プロービングデプスをアウトカムとした
・NDI(φ3.0-3.5) VS MI(φ1.8-2.9)
オペ後1年未満 VS 1年以上
を追加分析項目とした
RESULTS & DISCUSSION
・280文献がヒットし、最終的に6文献が本研究の条件に適合した
・6文献は2014〜2023年に出版されたもので、411本が即時荷重、439本が待時荷重(225名の被験者:148本がNDI、702本がMI)
・バイアスリスクに関しては、2文献が低く、3文献にはいくつかの懸念事項があり、1文献が高いと評価され、総合的には本研究はバイアスリスクが高いとされる
・生存率に関しては
即時荷重95.86%(394/411)と
待時荷重97.95%(430/439)に有意差なし
・NDI(φ3.0-3.5) VS MI(φ1.8-2.9)においても生存率に有意差なし
・MBLに関しては短期間では待時荷重が有意に少ないものの、長期間では有意差を認めず
CONCLUSION
小口径インプラント支持オーバーデンチャー治療において、即時荷重を行うことは待時荷重による治療と比較して、生存率・長期のMBL共に遜色がない
インプラント周囲炎における埋没法と非埋没法の外科的治療法における違いの比較-2つの前向き臨床研究の再分析
原題 :Submerged vs Nonsubmerged Reconstructive Approach for Surgical Treatment of Peri-implantitis : Reanalysis of Two Prospective Clinical Studies
筆者 :Shin-Cheng Wen / Hamoun Sabri / Ebrahim Dastouri / Wen-Xia Huang / Shayan Barootchi / Hom-Lay Wang
掲載紙:JOMI Vol39 issue4
PURPOSE
インプラント周囲炎治療における外科術式の違い(submerged VS nonsubmerged)を比較すること
MATERIALS AND METHODS
・過去に行われた2つの前向き臨床研究を再分析
→インプラント周囲炎に対して、同一施設にて同一術者が行った2種類の外科術式(submerged とnonsubmerged)を行った臨床研究2文献を元に再分析
・submerged 22人 30本
nonsubmerged 24人 29本
のインプラントを分析
・術式(submerged、nonsubmerged共通)局所麻酔下で全層弁にて剥離後、グレーシーキュレットを用いてインプラント周囲のデブライドメント(回転清掃器具とグリシンパウダーによる清掃とテトラサイクリンによる化学的清掃も併用)
・ラウンドバーにてデコルチフィケーション後、凍結乾燥骨60%、非脱灰乾燥骨20%、他家骨20%を用いて骨増生処置を行い、submerged法においては上部補綴を再装着せずカバースクリュー装着後、非吸収性メンブレンを設置し、インプラントを埋没させた状態にて縫合. Nonsubmergeにおいては、デブライドメント時に撤去した上部補綴は装着せず、適切なヒーリングアバッメントを装着し、コラーゲンメンブレンを設置し、埋没することなく縫合.
・defect fill(DF)、radiographic defect fill(RDF)、reduction of pocket depth(PDR), BoPを計測し比較
RESULTS & DISCUSSION
・外科術式に関わらず、PDRは減少(平均2.93±0.25mm /1.51±1.17mm)し、DF,
RDFも認められた。BoPに差は認められなかった.(Table 2・6)
・DFに関しては単変量解析では上下顎と外科術式に有意差を認め、多変量解析では外科術式のみ有意差(Table 3)
・RDFに関しては、単変量解析では上下顎と角化歯肉幅、外科術式に有意差を認め、多変量解析では外科術式のみ有意差(Table 4)
・PDR関しては単変量解析では角化歯肉幅と外科術式に有意差を認め、多変量解析では外科術式のみ有意差(Table 5)
CONCLUSION
インプラント周囲炎治療における外科術式においてsubmergedで行うことはnonsubmergedに比べて、臨床的・レントゲン的アウトカムにおいて有意に良好な結果を認めた。
下顎臼歯部におけるインプラント天然歯混合支台3ユニットブリッジの臨床的比較
原題 :Clinical Evaluation of Mandibular Posterior Three-Unit Combined Tooth-/Implant-Supported Fixed Partial Dentures : Controlled Prospective Clinical Study
筆者 :Orhun Ekren / Elif Figen KOcak / Yurdanur Ucar / Mehmet Emre Benliday /
Huseyin Can Tukei / Hazal Duyan Yuksel
掲載紙: JOMI Vol39-3 2024 P426-434
PURPOSE
下顎臼歯部における天然歯・インプラント混合支台3ユニットブリッジの臨床成績及び合併症を評価すること
MATERIALS AND METHODS
・2015年から2022年に大学病院(CUkurova Univ.)に来院した患者
→統計的分析に必要とさせる78名
・3グループに分類
インプラント支台のみ群→Group1
天然歯と8-12mm長さのインプラントの連結群→Group2
天然歯と5-6mm長さのインプラントの連結群→Group3
・インプラントはSLA(sandblasted large-grit,acidetched)表面を持つNucleOSS T4 T5インプラント
・第一小臼歯と第一大臼歯 または 第二小臼歯と第二大臼歯 支台の設計でGroup2及びGroup3においてはそれぞれ遠心支台がインプラント
・補綴物装着後及びリコール毎にMPI, BI,ポケット深さを計測
RESULTS & DISCUSSION
・78人中全データが得られたのは63人(5人が死亡・3人が転居・7人がCOVID-19関連によりドロップアウト)
・MPIはGroup1が有意に低く、2,3間に差は認めなかった
・BIは有意差なし
・CBLはGroup3が有意に低く、1,2間に差は認めなかった
・Group1において1人にセラミックのチッピングを認めた
・Group2において2人にチッピング、2人に補綴物の脱離、2人にリセッション
1人に再製、1人に歯髄炎を認めた
・Group3において1人に知覚過敏を伴うリセッション、1人に無症状のリセッション、1人にディスインテグレーションを認めた(撤去)
CONCLUSION
・本研究結果からはインプラント支台ブリッジが下顎臼歯部欠損症例における第一選択といえるが、天然歯との連結設計も予知性のある方針であり、ショートインプラントに優位性を認めた。
臼歯部単冠インプラント治療におけるデジタル法と従来法における治療時間の比較
原題 :Comparison of Treatment Time for Single-Implant Crowns Between Digital and Conventional Workflows for Posterior Implant Restorations : A Randomized Controlled Trial
筆者 :Worapat Jarangkul, MSc / Chatchai Kunavisarut, MSc /
Suchan Pornprasertsuk-Damrongsri, PhD / Tim / Joda, PhD
掲載紙: JOMI Vol39 issue2 P286-293
PURPOSE
臼歯部単冠インプラント治療におけるデジタル法と従来法における治療時間の比較を行い、使用材料による違いに関しても比較すること
MATERIALS AND METHODS
・40名の臼歯部インプラント単冠補綴患者をワークフローによりデジタル法と従来法、及び使用ブロック(ポリマー含有セラミックと2ケイ酸リチウム)の種類により10名ずつの4グループに分類
・インプラントの埋入を外科医が行い、補綴処置は印象と装着を別の補綴医が行った
・技工物は熟練した技工士が作成し、データ分析は独立した研究者が行った。
・デジタル法におけるIOSはiTero 5Dを用い、従来法の印象には3M Impregum Pentaを使用した。
・対合歯の印象はアルジネート印象材を用い、咬合採得はシリコンバイトを使用した。
・完成した補綴物の調整はダイアモンドバーとシリコンポイントを用いて行い、30分以上の調整が必要なケースには再印象を行った。
・チェアーサイド及びラボサイドにおける所用時間を計測し比較した。再製が必要であった場合は1時間を追加して計算した。
RESULTS & DISCUSSION
・ラボサイド及び全治療時間はデジタル法が有意に短かった。
・咬合面の調整にかかる時間はデジタル法が有意に短く、隣接面の調整時間には差を認めなかった。
・ポリマー含有セラミック群は2ケイ酸リチウムに比べデジタル法・従来法ともに咬合面の調整時間が有意に短かった。
・無調整及び再製の件数に関しては全群において有意差を認めなかった。
CONCLUSION
1 デジタル法、従来法ともに臼歯部単冠インプラント治療の良好な治療結果を得た。
2 デジタル法は従来法に比べ、使用材料に関わらず治療時間が短かった。
3 最終補綴の装着時間には差がなかった。
4 IOSを用いた片側のスキャンにかかる時間は従来法における印象時間より短く、ラボサイドにおける作業時間もデジタル法の方が短かった。
5 再製に関しては各グループ同程度であった。
ピエゾサージェリーによる頬側骨移動術:下顎骨の水平的骨増大術変法
原題 :PIezosurgical Buccal Plate Repositioning Technique : A Modified Surgical Approach for the Horizontal Augmentation of Atrophied Mandibles
筆者 :Mostafa M. Elshafey, / Ziad M. Tarek, / Rania A Farmy,
掲載紙:JOMI Volume39, issue1 P57-64
PURPOSE
下顎における頬側骨の移動術を改良した顎堤増大術を紹介すること
MATERIALS AND METHODS
・24名の患者をランダムに3群に振り分け
A群 頬側骨移動術 + 吸収性シリカ
B群 頬側骨移動術 + DFDBA
→A B ともに PRF 併用
C群 下顎枝からのブロック骨移植術
・A群B群においては使用材料を術者・分析者ともにブラインド
・術式(グループA群・B群)
1浸潤麻酔下にて切開・剥離
2 ピエゾサージェリーにて頬側骨を水平的及び垂直的に骨切開
3 2つの穴を形成後、ピエゾサージェリーにて頬側骨を離断
4 頬側骨を戻し、ピン(1.4×10mm)にて意図した位置に固定
5 骨鋭縁部をピエゾサージェリーにて形成後、補填材料を添入
6 PRF膜にて移植材をカバーし、減張切開及び縫合
・術式(C群)
下顎枝より採取したブロック骨を形成し、デコルチフィケーションを行なったのちに減張切開及び縫合
RESULTS & DISCUSSION
・A ♂2 ♀6 (平均45.40歳)
平均4.3mm拡大
・B ♂4 ♀4 (平均42.80歳)
平均4.98mm拡大
・C ♂6 ♀2 (平均44.31歳)
平均3.68mm拡大
CONCLUSION
頬側骨の水平的移動術は、ドナーサイトを必要とせず、インプラント埋入に必要な骨幅の獲得が可能となる術式である。