ごあいさつ
論文抄読のまとめ 2024〜 (歯科関連の方へ)
9種類のインプラント表面粗さと濡れ性及び酸素と炭素による汚染との関係
原題 :Relationship Between Roughness and Wettability of Nine Types of Implant Surface Oxygen and Carbon : In Vitro Evaluation
筆者 :Dougles Sampaio, Gustavo Batista Grolli Klein, Sheila Cavalca Cortelli,
Jorge Luiz Rosa, Giovani Souza Vieria, Rogerio de Lima Romeiro
掲載紙:JOMI VOi40 issue4 P439-448
PURPOSE
9種類のインプラントの表面粗さと親水性の相互関係を評価すること。また酸素及び炭素による汚染条件に関しても調査すること
MATERIALS AND METHODS
・機械研磨(MI)
酸化チタンブラスト処理(TOI)
酸化チタンブラスト・酸エッチング
(TOAEI)
ジルコニアブラスト・酸エッチング
(ZAED)
リン酸カルシウムコート(CPD)
実験素材(XD)
2種類のエッチング・ハイドロキシアパタイトコーティング(DAEHAS)
2種類のエッチング(DAES)
未加工(AMP)
の9種類の表面生状を持つ板状検体を作成(AMP以外はグレード4、AMPはグレー
ド5のチタンにて作成)
・表面粗さの分析は光学的表面形状分析装置を用いて分析(5標本)
・親水性の分析は表面液滴法を各検体3箇所で行い分析(4標本)
RESULTS & DISCUSSION
表面粗さは粗い順に
AMP TOI DAES CPD MI ZAED XD DAEHAS TOAEI
有意差がなかった組み合わせは太字
親水性は高い順に
CPD ZAED XD MI TOAEI TOI DAEHAS DAES AMP
有意差がなかった組み合わせは太字
表面粗さと親水性については、ZAED DAES MI に正の相関を認め、他は相関なし
CPD DAEHAS AMP TOIにおいて行った炭素及び酸素による汚染については表面粗さ親水性ともに相関を認めず
CONCLUSION
表面粗さと親水性については、ZAED DAES MI において正の相関を認めた
炭素及び酸素による汚染と表面粗さ親水性には相関を認めなかった
インプラント支持ジルコニア冠における咬合面および軸面厚さが破折に与える影響
原題 :Effect of Occlusal and Axial Thickness on the Fracture Load of Implant-Supported Monolithic Zirconia Crowns
筆者 :Min-Gyung Seo, Kyung-Ho, Yoon-Hyuk Huh, Chan-Jin Park, Lee-Ra Ch
掲載紙: JOMI Vol40 No3 313-320PURPOSE
インプラント治療におけるジルコニア冠の咬合面及び軸面の厚さが破折強度に与える影響を調査すること
MATERIALS AND METHODS
・咬合面厚さ 0.5mm 1.0mm
・軸面厚さ 0.4mm 0.8mm 1.2mm
→上記組み合わせによる6通りのアクセスホール付きジルコニア冠を作成
・20μmのセメントスペースを設けて作成し、アルミナサンドブラスト処理後レジンセメントにて接着
・5℃の冷水と55℃の温水を用いて30秒6000回のサーマサイクル(1年から1.5年を想定した経年劣化処置)
・ユニバーサルテストマシーンを用いての
破折強度の測定
・光学顕微鏡で破折した検体を観察し、分類(A:マージン部に達しない破折 B:マージン部に達する破折 C:クラックのみ)
・破折面のSEM像を観察
RESULTS & DISCUSSION
・6種類の検体の中で1.0×1.2mm群が最も強い破折強度を示し、0.5×1.2mm群に関しても1.0×0.4mm 群、1.0×0.8mm群よりも有意に高い破折強度を示した
破折の種類に関しては、0.5×0.4mm群が0.5×0.8mm群以外の他群と比較して有意にマージンに達しない破折(Group A)が多かった
1.2mm群においてはマージンに達する破折
(Group B)が最も多かった
・SEM像にて0.4mm群 0.8mm群では捻れた割れ目が観察されたが、1.2mm群では観察されなかった
・咬合面厚さの方が軸面よりも影響が大きいとの報告もあるが、アクセスホールを持たない検体による実験である
・SEM像にて捻れた割れ目が観測されていることより軸面厚さが十分でないジルコニア冠は長時間の負荷に耐えれないことが示唆される
CONCLUSION
軸面厚さを0.8mm群と1.2mm群の破折強度の差は咬合面厚さ0.5mm群と1.0mm群の差よりも顕著で、アクセスホールを有するインプラントにおけるジルコニア冠においては十分な軸面厚さをとることが破折強度の観点から重要である
インプラント破折に影響を与える要因分析
原題 :Clinical Outcomes of Dental Implant Fractures: A case Series and Analysis of Influencing Factors
筆者 : Zhen Li, Yun Yang, Meng Yang, Xin Tong
掲載紙: JOMI VOL40 issue2 P250-256
PURPOSE
フィクスチャー破折を観察し、影響を与える因子を分析すること
MATERIALS AND METHODS
・2007年から2019年に南京大学病院にてインプラント治療を受けた19名(♂15 ♀4 22-70歳)21本の破折インプラントについて調査した
調査基準
・18歳以上
・10年以内にインプラント治療を受け、最近1ヶ月以内に破折が起こった患者
・他に歯科疾患を有しない
・良好な咬合
・骨量・骨密度ともにインプラント治療に十分である患者
RESULTS & DISCUSSION
・13人が臼歯部での破折、6人が前歯部での破折
・12本がStraumann 5本がBego
3本がLifecore 1本がAnthology
・8本が上顎前歯部 3本が上顎臼歯部
10本が下顎臼歯部
・11本が単冠(3本が前歯部8本が臼歯部)
9本が連冠かブリッジ
(4本が前歯部5本が臼歯部)
CONCLUSION
・インプラントの破折を減少させるにはインプラントデザイン・適切な半径・上顎における合理的な補綴設計が有効である
TOPIC OF CONCERN
・治療方針が特殊?
・部位・補綴設計・他条件全てが多様であるにも関わらず、N数が限られるため特殊な状況が多い
・本研究による結果と結論が乖離
少なくとも得られると考える内容
フィクスチャーの破折は悪臭癖や過大な咬合力に起因せず、補綴設計によっては、考えているよりもおこり得るものかもしれない
上顎前歯部における単冠インプラントの切端位置変化の長期的予後
原題 :Long-Term Assessment(5-to 19-Year Follow-up) of the Incisal-Level Changes in Single Implants Placed in the Anterior Maxilla : An Observational Clinical Study
筆者 :lloeia Pontes Domingues, Juliana Campos Hasse Fernandes, Gustavo Vicentis Oliveria Fernandes, Julio Cesar Joly
掲載紙: JOMI VOL40 issue1 P33-40
PURPOSE
成人上顎切歯インプラント治療患者における隣在切歯との切端位置の比較を経時的に評価すること
MATERIALS AND METHODS
・上顎切歯インプラント(隣在歯は天然歯)
・19歳以上で5年以上経過
・パラファンクションとブラキシズム患者を除外
・年齢で4グループ(20-30歳・31-40歳・41-50歳・50歳以上)に分類
・経過期間により3グループに分類(5-9年・9-14年・14年以上)
・写真にてインプラントと隣在天然歯の切端位置を比較(0.4-0.7mmを0.5mm
0,8-1.2mmを1.0mmと記載)
・3人の研究者がそれぞれ測定し、不一致の場合には協議
RESULTS & DISCUSSION
・56本(♂21 ♀35)のインプラント
・23-63歳(平均40.79 ± 12.25歳)
・平均10.7 ± 3.37 年
・全てのインプラント周囲粘膜は健康でイ生存率は100%
・年齢別の4グループ間に有意差はなし
・性別による有意差なし
・処置後の経過時間に比例して変化量が
増える傾向が認められた
CONCLUSION
・全体で19.6%に切端位置の不一致が認められた
・年齢・性別による有意差は認められなかったが、経過期間が長くなると切端の不一致が認められやすい傾向があった
側方サイナスリフト術において粘膜の厚み(>5mm <5mm)が与える影響の比較
原題 :Changes in the Maxillary Sinus Membrane Thickness and Sinus Health Following Lateral Sinus Floor Elevation : Comparing Preoperative Mucosal Thicknesses of
< 5mm and > 5mm
筆者 :Kazem Khiabani, Farzaneh Nourbakhshian, Mohammad Hosein Amizade-Iranaq
掲載紙: JOMI VOL39 Isuue6 P867-874
PURPOSE
シュナイダー膜の厚さの違いが側方サイナスリフト術の予後に与える影響を調査すること
MATERIALS AND METHODS
適応条件
・18歳以上
・インプラント埋入部分のシュナイダー膜が平坦かつ厚さ10mm以下
・埋入部分に2.5〜6mmの既存骨
除外条件
・全身疾患
・副鼻腔炎、粘膜疾患、悪性腫瘍に罹患中もしくは既往がある
・インプラント予定部位が抜歯後3ヶ月未満
・口腔衛生不良、歯周病未治療
・10本/日以上の喫煙習慣
・未加療の鼻性副鼻腔炎の兆候
・季節性アレルギー性鼻炎、解剖学的鼻腔閉鎖
・上顎洞小孔閉鎖
・ドラッグもしくはアルコールの乱用
・CBCTにてシュナイダー膜を計測し、厚さ5mm以下群(A群)と5mm以上群(B群)に分類
・1人の術者が側方アプローチによるサイナスリフト術(DFDBAおよびFDBA、メンブレンは不使用)およびインプラント埋入を同日に処置
・パーフォレーションが起こった際には吸収性のコラーゲン膜にて修復
・術前および術後6ヶ月のシュナイダー膜の厚みと骨量をCBCTにて計測し分析
RESULTS & DISCUSSION
・5mm以下群(A群)20症例 5mm以上群(B群) 20症例(インプラント52本)を計測
・27.5%が♀ 72.5%♂ 平均年齢48.8±7.8歳(34-65歳)
・術前のシュナイダー膜はA群が1.4±0.9mm 、B群が6.8±1.0mmで、術後のA群は1.3 ±0.6 mm B群は3.4 ±1.7mmとなりB群のみに有意差を認めた
・増成骨量および既存骨量に関しては両群ともに術前後においてどちらも有意差を認めなかった
・シュナイダー膜の裂孔に関しては両群とも20%で有意差はなく、いづれもリカバリーされた。副鼻腔に関する合併症も両群ともに認めず、剥離時の出血症例数と挙上時の抵抗はB群が有意に高かった
・手術時間に関してもB群が有意に高かった
CONCLUSION
側方サイナスリフトを行う際に、シュナイダー膜の厚さが >5mm群と <5mm群において術後合併症に差はなく、>5mmの厚みのある症例は禁忌症ではない