ごあいさつ
論文抄読のまとめ 2024〜 (歯科関連の方へ)
インプラント破折に影響を与える要因分析
原題 :Clinical Outcomes of Dental Implant Fractures: A case Series and Analysis of Influencing Factors
筆者 : Zhen Li, Yun Yang, Meng Yang, Xin Tong
掲載紙: JOMI VOL40 issue2 P250-256
PURPOSE
フィクスチャー破折を観察し、影響を与える因子を分析すること
MATERIALS AND METHODS
・2007年から2019年に南京大学病院にてインプラント治療を受けた19名(♂15 ♀4 22-70歳)21本の破折インプラントについて調査した
調査基準
・18歳以上
・10年以内にインプラント治療を受け、最近1ヶ月以内に破折が起こった患者
・他に歯科疾患を有しない
・良好な咬合
・骨量・骨密度ともにインプラント治療に十分である患者
RESULTS & DISCUSSION
・13人が臼歯部での破折、6人が前歯部での破折
・12本がStraumann 5本がBego
3本がLifecore 1本がAnthology
・8本が上顎前歯部 3本が上顎臼歯部
10本が下顎臼歯部
・11本が単冠(3本が前歯部8本が臼歯部)
9本が連冠かブリッジ
(4本が前歯部5本が臼歯部)
CONCLUSION
・インプラントの破折を減少させるにはインプラントデザイン・適切な半径・上顎における合理的な補綴設計が有効である
TOPIC OF CONCERN
・治療方針が特殊?
・部位・補綴設計・他条件全てが多様であるにも関わらず、N数が限られるため特殊な状況が多い
・本研究による結果と結論が乖離
少なくとも得られると考える内容
フィクスチャーの破折は悪臭癖や過大な咬合力に起因せず、補綴設計によっては、考えているよりもおこり得るものかもしれない
上顎前歯部における単冠インプラントの切端位置変化の長期的予後
原題 :Long-Term Assessment(5-to 19-Year Follow-up) of the Incisal-Level Changes in Single Implants Placed in the Anterior Maxilla : An Observational Clinical Study
筆者 :lloeia Pontes Domingues, Juliana Campos Hasse Fernandes, Gustavo Vicentis Oliveria Fernandes, Julio Cesar Joly
掲載紙: JOMI VOL40 issue1 P33-40
PURPOSE
成人上顎切歯インプラント治療患者における隣在切歯との切端位置の比較を経時的に評価すること
MATERIALS AND METHODS
・上顎切歯インプラント(隣在歯は天然歯)
・19歳以上で5年以上経過
・パラファンクションとブラキシズム患者を除外
・年齢で4グループ(20-30歳・31-40歳・41-50歳・50歳以上)に分類
・経過期間により3グループに分類(5-9年・9-14年・14年以上)
・写真にてインプラントと隣在天然歯の切端位置を比較(0.4-0.7mmを0.5mm
0,8-1.2mmを1.0mmと記載)
・3人の研究者がそれぞれ測定し、不一致の場合には協議
RESULTS & DISCUSSION
・56本(♂21 ♀35)のインプラント
・23-63歳(平均40.79 ± 12.25歳)
・平均10.7 ± 3.37 年
・全てのインプラント周囲粘膜は健康でイ生存率は100%
・年齢別の4グループ間に有意差はなし
・性別による有意差なし
・処置後の経過時間に比例して変化量が
増える傾向が認められた
CONCLUSION
・全体で19.6%に切端位置の不一致が認められた
・年齢・性別による有意差は認められなかったが、経過期間が長くなると切端の不一致が認められやすい傾向があった
側方サイナスリフト術において粘膜の厚み(>5mm <5mm)が与える影響の比較
原題 :Changes in the Maxillary Sinus Membrane Thickness and Sinus Health Following Lateral Sinus Floor Elevation : Comparing Preoperative Mucosal Thicknesses of
< 5mm and > 5mm
筆者 :Kazem Khiabani, Farzaneh Nourbakhshian, Mohammad Hosein Amizade-Iranaq
掲載紙: JOMI VOL39 Isuue6 P867-874
PURPOSE
シュナイダー膜の厚さの違いが側方サイナスリフト術の予後に与える影響を調査すること
MATERIALS AND METHODS
適応条件
・18歳以上
・インプラント埋入部分のシュナイダー膜が平坦かつ厚さ10mm以下
・埋入部分に2.5〜6mmの既存骨
除外条件
・全身疾患
・副鼻腔炎、粘膜疾患、悪性腫瘍に罹患中もしくは既往がある
・インプラント予定部位が抜歯後3ヶ月未満
・口腔衛生不良、歯周病未治療
・10本/日以上の喫煙習慣
・未加療の鼻性副鼻腔炎の兆候
・季節性アレルギー性鼻炎、解剖学的鼻腔閉鎖
・上顎洞小孔閉鎖
・ドラッグもしくはアルコールの乱用
・CBCTにてシュナイダー膜を計測し、厚さ5mm以下群(A群)と5mm以上群(B群)に分類
・1人の術者が側方アプローチによるサイナスリフト術(DFDBAおよびFDBA、メンブレンは不使用)およびインプラント埋入を同日に処置
・パーフォレーションが起こった際には吸収性のコラーゲン膜にて修復
・術前および術後6ヶ月のシュナイダー膜の厚みと骨量をCBCTにて計測し分析
RESULTS & DISCUSSION
・5mm以下群(A群)20症例 5mm以上群(B群) 20症例(インプラント52本)を計測
・27.5%が♀ 72.5%♂ 平均年齢48.8±7.8歳(34-65歳)
・術前のシュナイダー膜はA群が1.4±0.9mm 、B群が6.8±1.0mmで、術後のA群は1.3 ±0.6 mm B群は3.4 ±1.7mmとなりB群のみに有意差を認めた
・増成骨量および既存骨量に関しては両群ともに術前後においてどちらも有意差を認めなかった
・シュナイダー膜の裂孔に関しては両群とも20%で有意差はなく、いづれもリカバリーされた。副鼻腔に関する合併症も両群ともに認めず、剥離時の出血症例数と挙上時の抵抗はB群が有意に高かった
・手術時間に関してもB群が有意に高かった
CONCLUSION
側方サイナスリフトを行う際に、シュナイダー膜の厚さが >5mm群と <5mm群において術後合併症に差はなく、>5mmの厚みのある症例は禁忌症ではない
小口径インプラント支持オーバーデンチャーにおける即時荷重と待時荷重の比較
原題 :Immediate Versus Non-Immediate Loading Protocols for Reduced-Diameter Implants Supporting Overdentures: A Systematic Review and Meta-analysis
筆者 :Ying Liu, Yaoyu Zhao, Quan Sun, Haibin Xia, DAhong Xia, Yi Bai
掲載紙:JOMI 2024 VOL39 Number5 P657-664
PURPOSE
小口径インプラント支持オーバーデンチャー治療時における即時荷重と待時荷重の比較をシステマティックレビューにて比較すること
MATERIALS AND METHODS
・小口径インプラント支持オーバーデンチャーにおける即時荷重と待時荷重の比較をRCTにて行った論文を
・MEDLINE, Embase,コクランデータベース及びハンドサーチにて収集後、2名の研究者が独自に採択し、意見の食い違いは3人目の研究者が判断
・バイアスの評価はRob及びGRADEを用いて評価
・データの統合はReview Managerを用いて行い、同一性はQテストにて評価
・即時荷重、待時荷重それぞれにおけるインプラント生存率・MBL・プラークインデックス・プロービングデプスをアウトカムとした
・NDI(φ3.0-3.5) VS MI(φ1.8-2.9)
オペ後1年未満 VS 1年以上
を追加分析項目とした
RESULTS & DISCUSSION
・280文献がヒットし、最終的に6文献が本研究の条件に適合した
・6文献は2014〜2023年に出版されたもので、411本が即時荷重、439本が待時荷重(225名の被験者:148本がNDI、702本がMI)
・バイアスリスクに関しては、2文献が低く、3文献にはいくつかの懸念事項があり、1文献が高いと評価され、総合的には本研究はバイアスリスクが高いとされる
・生存率に関しては
即時荷重95.86%(394/411)と
待時荷重97.95%(430/439)に有意差なし
・NDI(φ3.0-3.5) VS MI(φ1.8-2.9)においても生存率に有意差なし
・MBLに関しては短期間では待時荷重が有意に少ないものの、長期間では有意差を認めず
CONCLUSION
小口径インプラント支持オーバーデンチャー治療において、即時荷重を行うことは待時荷重による治療と比較して、生存率・長期のMBL共に遜色がない
インプラント周囲炎における埋没法と非埋没法の外科的治療法における違いの比較-2つの前向き臨床研究の再分析
原題 :Submerged vs Nonsubmerged Reconstructive Approach for Surgical Treatment of Peri-implantitis : Reanalysis of Two Prospective Clinical Studies
筆者 :Shin-Cheng Wen / Hamoun Sabri / Ebrahim Dastouri / Wen-Xia Huang / Shayan Barootchi / Hom-Lay Wang
掲載紙:JOMI Vol39 issue4
PURPOSE
インプラント周囲炎治療における外科術式の違い(submerged VS nonsubmerged)を比較すること
MATERIALS AND METHODS
・過去に行われた2つの前向き臨床研究を再分析
→インプラント周囲炎に対して、同一施設にて同一術者が行った2種類の外科術式(submerged とnonsubmerged)を行った臨床研究2文献を元に再分析
・submerged 22人 30本
nonsubmerged 24人 29本
のインプラントを分析
・術式(submerged、nonsubmerged共通)局所麻酔下で全層弁にて剥離後、グレーシーキュレットを用いてインプラント周囲のデブライドメント(回転清掃器具とグリシンパウダーによる清掃とテトラサイクリンによる化学的清掃も併用)
・ラウンドバーにてデコルチフィケーション後、凍結乾燥骨60%、非脱灰乾燥骨20%、他家骨20%を用いて骨増生処置を行い、submerged法においては上部補綴を再装着せずカバースクリュー装着後、非吸収性メンブレンを設置し、インプラントを埋没させた状態にて縫合. Nonsubmergeにおいては、デブライドメント時に撤去した上部補綴は装着せず、適切なヒーリングアバッメントを装着し、コラーゲンメンブレンを設置し、埋没することなく縫合.
・defect fill(DF)、radiographic defect fill(RDF)、reduction of pocket depth(PDR), BoPを計測し比較
RESULTS & DISCUSSION
・外科術式に関わらず、PDRは減少(平均2.93±0.25mm /1.51±1.17mm)し、DF,
RDFも認められた。BoPに差は認められなかった.(Table 2・6)
・DFに関しては単変量解析では上下顎と外科術式に有意差を認め、多変量解析では外科術式のみ有意差(Table 3)
・RDFに関しては、単変量解析では上下顎と角化歯肉幅、外科術式に有意差を認め、多変量解析では外科術式のみ有意差(Table 4)
・PDR関しては単変量解析では角化歯肉幅と外科術式に有意差を認め、多変量解析では外科術式のみ有意差(Table 5)
CONCLUSION
インプラント周囲炎治療における外科術式においてsubmergedで行うことはnonsubmergedに比べて、臨床的・レントゲン的アウトカムにおいて有意に良好な結果を認めた。